こんにちは、静岡市葵区の弁護士浅野智裕です。
今回は、刑事手続きにおける身体拘束の話をしたいと思います。
世間でも大きなニュースとなっているとおり、日産会長のカルロス・ゴーン氏が平成30年11月19日に逮捕され、その後、勾留されました。
世間では、カルロス・ゴーン氏のニュースがたくさん流れており、すでにカルロス・ゴーン氏が不正行為をしていたかのような報道が多くあります。
一方で、カルロス・ゴーン氏は否認をしており、適法だったと主張しています。
カルロス・ゴーン氏が有罪になるかどうか、法律家として言わせていただくと、事案の生の証拠などを見てみないと判断つかないと思います。
いまニュースで流れてきているのは報道機関による証拠の評価が一定入っていると思われますし、捜査機関が意図的にそのように情報を流している可能性も否定できません。実際の証拠を見てみれば、ニュースとは若干違ったニュアンスになる可能性もあります。実際、物は言いようとはいいますが、1つの証拠から色々な言い方ができるものです。
そういう意味でカルロス・ゴーン氏が違法な行為をしたかどうかは、まだわかりません。
しかし、今回のブログで言いたいのは逮捕勾留された被疑者(法律での正確な用語は「被疑者」です。「容疑者」という言葉は法律にはありません)がどのような身体拘束を受け、外部との接触を遮断されるかです。
まず、逮捕された被疑者は最長72時間身体拘束をされます。その間に勾留されるかどうかが決まります。勾留された場合、さらに10日間の身体拘束がなされます。勾留されなければ釈放されます。そして、勾留された被疑者について、検察官が起訴するかどうかを判断しますが、10日間で判断がつかず、裁判所が認めた場合、最長で10日間勾留延長がなされます。最長で10日間の勾留延長なので、ときには5日間の勾留延長になることもあります。そうすると、逮捕から数えれば最長23日間になります。この間に検察官が起訴するかどうかを決めます。
公判請求された場合には、その後、勾留は裁判が終了するまで続きます。略式起訴された場合にはだいたい起訴した日のうちに釈放されます。不起訴や処分保留の場合にもその日に釈放されます。
そして、公判請求された場合に、保釈が認められれば、釈放されます。保釈は、裁判所が認めるかどうか、保釈保証金が用意できるか、という問題があります。ちなみに、起訴前には保釈制度はありません。
このように事案によってはかなり長期の身体拘束がなされます。
また、面会について、弁護人は基本的には制限がありませんが、弁護人以外の面会はかなり制限されています。家族も弁護人以外になりますので、家族も面会がかなり制限されてしまいます。
まず、逮捕段階では一般の面会できません。そうすると、被疑者は、弁護人以外だと刑事や警察署職員としか話す相手がいません。はっきり言ってかなり孤独ですし、取り調べが激しくなることもあって、被疑者はかなり精神的に追い込まれてしまいます。
勾留後には一般面会の制度はありますが、警察署の都合で1日に1回であったり、時間もかなり限定されます。被疑者にとってみれば、弁護人以外の外部の接触はせいぜい1日1回、30分程度になってしまいます。また、面会時間が制限されることから都合がつかず、面会できないこともあります。そうすると、1日、話をする相手は刑事か、弁護人か、留置場の同部屋の被疑者くらいになります。また、接見禁止といって、一般面会をできなくする制度があります。これは裁判所が決めるのですが、実務では多く接見禁止がなされています。そうすると、家族と全く会えない日が続くことになります。長ければ起訴後も続いてしまえばずっと会えないことになります。
身体拘束中はもちろん自由に移動できませんし、スマホも取り上げられ、外部への連絡(電話、メールなど)も一切禁止されます。そして、上記のとおり面会が制限され、外部との接触が極端に少なくなったり、全くなくなったりします。
もちろんこれは、有罪となる前の話です。当然、この中で不起訴となる人もいます。今の制度は、有罪になる前の被疑者の段階でも、身体的、精神的な負担のある制度となっています。捜査の必要性もあるかもしれませんが、個人的には家族も含めた全面的な接見禁止がなされる事案でも家族まで接見禁止にする必要はないのではないかという事案が結構見受けられます。もちろん、弁護人として、接見禁止一部解除の申し立てをよくしていますが、すぐに一部解除するなら、最初から家族は接見禁止から除いて欲しいと思ったりします。