こんにちは、静岡市葵区の弁護士の浅野智裕です。
今日は自賠責保険金の過失相殺の話をしたいと思います。
自賠責保険とは、正式名称を自動車損害賠償責任保険とい、自動車損害賠償法で定める強制保険になります。そして、自動車損害賠償法3条による賠償責任が認められる場合にその損害を保険で填補することになります。自動車賠償法3条は人身事故に限っていますので、自賠責保険も人身事故に限られます。
また、過失相殺とは、民法722条2項に基づくもので被害者にも過失があった場合に損害賠償額を減算するもので、交通事故でも適用されます。例えば、被害者に2割の過失があった場合、損害賠償額も2割減少します。
もっとも、自賠責保険で支払われる保険金の算定では過失相殺は特殊な処理をしています。結論から言いますと、以下のように処理されます。
被害者の過失 | 減額割合 | |
後遺障害または死亡 | 傷害 | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
つまり、過失相殺による減額がない、または軽くなっています。これは自賠責保険が被害者を保護するための制度であるため、被害者に有利になるように取り扱っているのです。なお、当然ですが、被害者に100%の過失となった場合にはそもそも保険金は支払われません。
それでは、被害者に過失が出る場合には、常に自賠責保険のほうが有利なのでしょうか。
これはケースバイケースになります。
なぜならば、自賠責保険は支払基準が決まっていて、裁判の基準に比べて、特に慰謝料などが低くなっています。つまり、大雑把に言うと、自賠責保険は、慰謝料は安いですが、過失相殺による減額はないまたは少ないということになります。
そうすると、被害者の過失が小さい場合には自賠責保険よるも裁判基準のほうが高くなることがあります。一方で被害者の過失が大きいが7割未満の場合には自賠責保険のほうが有利になることがあります。もっとも、怪我の内容・程度で変わってくるので事案ごとに見極めをしないといけません。これは法律のプロである弁護士がすべき仕事になります。
上記のような取扱いを意識しながら依頼者に有利になるようアドバイスをしていきます。