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TBS系ドラマ「グッドワイフ」(※5話まで)/主に成年後見制度への誤解について

若狹です。

 

今日は静岡マラソンのようですが、私は出場しません・・・。この時期花粉症がひどいのと、体調関係なく初級者には制限時間がキツめだからです。制限時間が6時間30分くらいでゴールとスタートが同じ場所なら出たいんですけどねえ。ランナーの皆さんは楽しんでくださいね。

さて、先日好意的な記事を上げたばかりでアレですが、ようやく視聴がほぼ追いついた「グッドワイフ」5話は少し残念な内容でした。常盤貴子さんを筆頭に役者陣はいいんですけどねえ。
フィクションに対して「現実と違う!」と突っ込むのがヤボなのは百も承知です。しかし、水原希子さん演じるパラリーガルが裏ルートからバンバン捜査情報を取ってくる(実際に取ってこられても出所不明の捜査情報なんて民事でも刑事でも証拠として使えないでしょう笑)のと違って、下記の点は別の方法でもエンタメとしておもしろくできるんだろうから、もう少し法律監修の方か脚本の方がしっかりしてほしいと思いました。
手塚治虫先生の「ブラック・ジャック」の昔から、「正しさ」と「おもしろさ」の両立は本当に難しいとは思うのですが、職業柄法律関係のドラマだとどうしてもアラが気になっちゃうんですよね。

 

①成年後見制度は「後見人が被後見人の財産を自由に使える制度」ではありません。

ドラマの中身の話になっちゃいますが、とある登場人物が寝たきりになった際、「その配偶者が(当然に)成年後見人となり、配偶者が後見制度を利用して数十億円の財産を自由に使える」と主人公側の弁護士が依頼者に解説するシーンがありました。
少し考えればわかると思いますが、ご家族であっても弁護士等の専門職であってもとにかく何であっても後見制度を利用して他人の財産を自分のために使ったら業務上横領罪になりますからね……。「仕事で経理の担当者に任命されれば会社のお金を自由に使える」レベルの暴論とたとえればわかりやすいでしょうか。
私も仕事で後見人の業務を取り扱い、財産をお預かりしていますが、ただでさえ一部週刊誌やネット記事等でセンセーショナルな嘘記事も出ているのに、影響力の大きいドラマでのこういう「もっともらしい嘘」は後見制度への不安や誤解を招きかねないので本当にやめてほしいです。
後見制度の全体を解説しきるにはブログ欄ではスペースがないのでまたの機会にしようかと思いますが、万が一の犯罪を事前に予防するため、後見制度支援信託や後見支援預金を初め、我々弁護士が一定の大きな資産をお預かりする場合は、弁護士の成年後見人にさらに別の弁護士を成年後見監督人として就けて監督する(※静岡県弁護士会の場合)など、安心して後見制度をご利用いただくための対策をとっているんですけどね。
悪貨は良貨をナンチャラという諺じゃないですが、「ちゃんと対策してますよっていう周知・広報」よりも、どうしても「不安の煽り」の方が世間の耳目を集めてしまいますから、悩ましいものです。

②「胎児の親権者」とは?

こちらは少しテクニカルな話ですが、法律上、人は、産まれてから権利能力が認められます(民法第3条1項:私権の享有は、出生に始まる。)。現実に問題となることはまずありえませんが、「出生」というのは、厳密には「胎児が母体から全て露出してから」と考えられています(全部露出説)。
胎児であっても⑴不法行為による損害賠償請求、⑵相続、⑶遺贈については権利能力が認められますが(民法第721条、第886条、第965条)、その場合でも「産まれた時点で胎児の時点に遡って権利能力が認められる」と解釈されていますので(停止条件説)、妊娠中の登場人物があたかも「胎児の法定代理人(親権者)」として振る舞うシーンは「嘘」ですね。“敵役”が明らかに誤った法解釈をしてるんだから“主人公側”がちゃんと指摘しないと単に能力がない人に見えちゃいますよ…。
このドラマ、アメリカ版原作があるらしいのですが、アメリカのどこかの州では法制度が違ったりするのでしょうか?