静岡の弁護士の若狹です。
少し前の話題ですが,アメリカはシカゴ出身のラッパー/プロデューサー/政治家のカニエ・ウェストさんが「Ye」さんに改名を申し立てているそうですね。
「Kanye West」⇒「Ye」ということは,私であれば,「秀和 若狭」⇒「和」という感じでしょうか。う~ん。
昨年の大統領選に立候補したり,その他にもいろいろお騒がせなタイプの人で,最近は音楽性も含めて正直方向性がよくわからないですが,初期3部作のアルバムは(こう見えて?)学生の頃まあまあ聴いていました。
(3rdアルバム。村上隆さんデザインのクマちゃんかわいい)
カニエさんが申立てを行っているというカリフォルニア州の法制度のことは正直よくわかりませんが,日本では氏や名の変更は以下のように規定されています。
[氏の変更](戸籍法107条第1項)
・変更の「やむを得ない事由」があること
・同一戸籍内にある15歳以上の者の陳述を聞くこと
具体的には,婚氏続称後の届け出後の生来の氏への変更,通姓の永年使用,珍奇な氏の場合などがあるそうです。
過去の裁判例だと,「肴屋」という氏,「大工」という氏の変更はそれぞれ認められました。
もともと先祖から子孫へ受け継ぐものなので,婚氏が絡まないとなかなか変更のハードルが高いです。
[名の変更](戸籍法107条の2)
・変更の「正当な事由」があること
氏の変更よりも緩やかな基準で許可され,奇妙な名,難解・難読な名であるほか,同姓同名者がいて不便であること,異性と紛らわしい名であること,神官や僧侶となるため必要であること,通称としての永年使用がある場合,営業上の目的がある場合(⇒商号と密接な関係がある場合),性同一性障害と診断され新しい名の使用実績もある場合などがあるそうです。
一方,昭和61年という少々古い事例ですが,「●子」(※判例検索サイトには実名が載っていますが一応伏せます)という名前の方が,今後,米国に永住する予定であるため「ジャネット」にしたいという申立ては認められなかったそうです。
ここらへんは,どれだけ「正当な事由」の証拠を集め,それを法律上に理屈づけて裁判官を説得するかという弁護士の腕の見せどころですかねえ。
どちらにしろ,日本では氏を廃することはできないので,カニエ・ウェストさんの申し立てと違って名字を捨てて氏名を「秀」や「和」だけにすることは日本ではできません(しませんけど)。
改名に対する姿勢は国ごとに結構違うみたいですが,スシローが台湾で「鮭魚」という名前の方に食事代無料キャンペーンを行ったところ,タダ飯狙いの改名が相次いだ(台湾では3回までは簡単に改名できるので),みたいなことがあっても何となく困りますしねえ。