こんにちは、浅野です。
6月2日に日本賠償科学会の研究会に出席してきました。
日本賠償科学会とは同会のホームページによれば
損害賠償に関する諸問題を医学と法学の両側面から学際的に研究し、人身傷害の認定並びに民事責任の認定の適正化に資することを目的とする学会である。
とのことです(ホームページ引用)。
要するに賠償問題について、医学と法学の観点から研究するというものです。
今回のテーマはテーマは「世界から学ぶ。自覚症状を如何に客観的に評価するか?痛み・後遺障害を客観視する。」というものです。
痛みは、特に後遺障害認定で争いになります。自賠責の後遺障害等級で14級9号が「局部に神経症状を残すもの」、12級13号が「局部に頑固な神経症状を残すもの」と定められています。
事故後残った痛み特に疼痛は多くは上記14級9号、12級13号または非該当のいずれかになります。このときに被害者が痛みを訴えていても非該当になることが多くあります。
痛みというものは基本的には主観的なものと考えられています。他人が被害者の痛みそのものを測ることはできず、本人の訴え傷害内容、症状、治療経過から痛みの程度を測るのが通常だと思います。こういったなかで被害者本人の訴えと他人の評価が食い違い、争いになることがあります。
今回は、そのような痛みを客観的に評価することができないか、ということが研究テーマになります。fMRIで計測したデータから痛みの程度を予測することが研究報告されているとのことでした。研究では、熱刺激に対して被検者がどの程度痛いと評価するかを脳活動パターンから予測できるという報告もあるようです。
しかし、熱刺激以外の痛みではどのように評価されるかまだわからないそうです。またこれはまだまだ研究されているところで臨床応用や裁判での証拠利用は時期尚早とのことでした。
将来的にはこういった研究が広く進み、痛みの程度を客観的に測ることができるようになれば被害者本人の訴える痛みの程度を客観的に捉えることができ、争いが減ることを期待できるかもしれません。もっとも、当面の間は従前のような被害者の痛みがどの程度のものなのか、今まで通りのやり方で主張立証していくことになりそうです。